フィクション:地底の惨劇、ちょっと書いてみようかな

不謹慎、だなんていわないでね。これ、JRのあまりの杜撰さにあきれてのこと。うまく書けたら、JRに贈呈しよう。ご批判、ご意見、お待ちしております。


地底の惨劇


時は夜。汚れ、散らかった事務所で中年の親爺と二人の外国人がぼそぼそと話をしている。

「そんなうまい話があるモンかね」
「技術、国造りに必要。ワタシの国、戦争終わった、でも、経済、駄目ね」アラブ系と思しき若者が言う。
「しかし何で俺の工場なんか」
「日本の産業、下請けの上に成り立ってます。これ、技術移転し易い。で、あちらに基盤、作ります」

もう一人の、一見ビジネスマン風の白人は、そう言って、アタッシュケースを机の上で開く。その中には、ぎっしり詰まった札束の上に、白い大判の封筒が載っている。

「さ、取引を、、、」白人、そう言うと、封筒を手に取ってその中の書類を親爺にさし出す。

親爺、アタッシュケースの札束を呆然と眺めて、しばし無言。

数日後、活気を取り戻した工場を3人の外国人が訪れる。先日の若者、3人を事務所に迎え入れる。

「ご苦労だったな、早速見せてもらおうか」小柄な訪問者が、あごをさすりながら言う。

若者は、弾けるように椅子を立つと、3人を工場に案内する。還流器の付いた大きなフラスコが、アルミの桶に斜めに漬かり、モータ仕掛けでぐるぐると回っている。

「TNTは、3段階のニトロ化で作ります」若者は説明する。「この3つが、それです」
「中には、何が入っておるのかね」
「硫酸と硝酸、そこにトルエンを滴下します」

若者は、還流器から出ている細いチューブを指差して言う。チューブの先を目で追うと、それは、ローラ式のポンプを経て、ガラス容器につながっている。

「これがトルエンでして、この容器に入れた量だけ、反応します」若者は説明を続ける。
「酸のほうは、あらかじめフラスコに入れておくんですが、3段目に新しい酸を使い、2段目、1段目には、それぞれ後の段で使い終わった酸を使用いたします。製品がこちらでして、後ほど溶かして、形に作り直します」

ドラム缶に掛けられた麻布を若者が取り上げ、訪問客が中を覗き込む。そこには、不規則な形をした黄色い固体がいくつも入っている。

「爆発の危険はないのかね」小柄な訪問者がそういうと、もう一人の訪問者が否定する。
「TNTはめったなことでは爆発しません。爆発させるには雷管が必要です」
「雷管はどうやって手に入れるのだね」
「硝酸水銀から作りました」若者は切り詰めた葉巻のケースを取り出して言う。
「こちらは敏感ですから気を付けて下さい」

事務所に引き上げた訪問者は、空のトランク二つを若者に渡す。若者は、葉巻のケースと、プリント基板をさし出して言う。

「こちらが時限装置、スイッチを入れると、正確に2時間後に点火します」
「この線をこちらに繋げば良いわけだな」良い体格の訪問者が言う。
「はい。ガラスを取った豆球のフィラメントに雷膏が塗ってあります」
「それではテストしておこう。本番は一月後、トランクにセットを頼む」「かしこまりました」
「インシャラー」別れの言葉が交わされる。

大海の真っただ中を行く船、どこかのお金持ちが所有するモータ付きのヨットだ。春の日差しの下、デッキでは男達がのんびりと釣り糸をたれている。と、遠くに小さな爆発音。

「2時間、ジャスト、正確だな。本番は5分後か」

一人の男は、そう言って、操舵室に手振りで合図する。ヨットは、エンジンを吹かすと、大きく舵を切って、爆発音のしたあたりから遠ざかる。やがて後方で大きな爆発音が聞こえる。操舵室の上で双眼鏡で見ていた男が言う。

「完璧です。ボートは、ばらばらになりました」
「2キロでこれほどか。すごいものだな」

ゴールデンウイークの行楽客で込み合う東京駅、東海道新幹線の改札口、二人の外国人が大きなトランクを曳いて改札口を通り抜ける。手にはKYOTOと大書したガイドブックが握られている。男がちらりと目をやった先には、小さな台の上に、武装した警察官が立っている。

男達の乗ったのは9時3分東京発新大阪行きの、のぞみ109号、700系と呼ばれる16両編成の車両の先頭、1号車である。その、最後部の席に進むと、座席の裏側のスペースにトランクを入れる。

第一報は、「東海道新幹線、東京名古屋間の運転を休止」という素っ気のないものだった。

次に入った速報は、「のぞみ42号とのぞみ109号が、丹那トンネル内で立ち往生」原因は不明で、現在、救援隊が現場に向かっているというもの。

その次のニュースは、「毒ガスか? 救援隊に犠牲多数。新幹線丹那トンネル事故で」というもの。この時点で、政府はテロの可能性を考え、緊急対策本部を設置、自衛隊の出動を命令する。しかし、丹那トンネル深部の出来事、情報は遅々として入ってこない。

やがて、トンネルの排気ガスに一酸化炭素を検出する。専門家は、これが軍用のTNT火薬による可能性を指摘、トンネル出口付近の住民からも、爆発音を聞いたとの証言が得られる。どうやら新幹線は、爆破されたらしいという見方が急浮上する。同日午後、通信社は東京発のニュースをいっせいに配信する。

「東海道新幹線にテロ攻撃か? 2,500人が生死不明」

小泉総理「テロと決まったわけではない。脱線、衝突による火災という可能性もあります」

しかし、夕刻、アルカイダの犯行声明が出て、真偽は不明ながら、テロとの見方が支配的になる。

菅代表「政府にも責任があると認識すべき。イラク派兵も、国内のテロ対策も」
公明党「イラク撤退を含めて議論されることになるだろう」

数日後、現場にたどり着いたTVクルーが送り届けた映像はひどいものだった。新幹線の先頭部は、原型を留めていない、スクラップの鉄塊と化して、トンネル内に貼り付いている。既に運び出された車体後部は、かろうじて、列車の形がわかるものの、ばらばらの残骸であり、いたるところに犠牲者の血がこびりついている。生存者は見当たらない。そして、トンネルのコンクリート壁は、車両が激しく衝突したためか、大きく削られている。

ブッシュ大統領から送られた心温まるメッセージも、この期に及んでは、何の役にも立たない。