「相対性理論の考え方」を読む

先日のブログで、時間は虚数と考えるべきではないか、ということと、この考え方は古くミンコフスキーによって提案されており、これを無視する現在の物理学(業界?)は、少々おかしいのではなかろうか、などといった疑惑を提示いたしました。

で、本屋に入りますと、このあたりのことが少々気になりまして、いろいろと立ち読みをしてしまうのですが、そんななかの一冊、「相対性理論の考え方」は、ミンコフスキーの虚数時間にも触れておりますし、なかなかわかりやすい書き方をしている、ということで買ってしまいました。まあ、薄い本ですし、お値段税別2,400円は、さほど高くもないような気がいたします。

この本が非常に良くまとまっている、というのは目次からも見て取れます。そこで、目次とその内容につきまして、ざっとご紹介しておきましょう。

1 特殊相対論へのあゆみ
ガリレイ、ニュートンの物理学によれば光の速度はそれを測定する場所の運動の影響を受けるはずであるのに、どう測定しても光速は一定であるように見えることから、ローレンツ収縮が導き出された、という相対論前史、ともいうべき部分です。

2 特殊相対論とローレンツ変換
アインシュタインが、電磁波を伝える媒体としての「エーテル」を否定し、光速不変の原理から特殊相対論を導き出した、その道筋を紹介します。

3 4次元時空
ここでミンコフスキーの4次元時空が紹介されます。時間を虚数として取り扱うことで、ローレンツ変換と矛盾しない時空の姿を描くことができます。

4 相対性力学
ここでは、4元ベクトルを導入すると共に、運動する物体上での時間(固有時)を説明し、運動方程式を導きます。

5 ローレンツ変換の物理
相対運動する座標系において、時計が遅れたり長さが伸び縮みする、という例のアレです。

6 マクスウェル方程式の共変性
マクスウェルの方程式を4元ベクトルで説明します。これはしかし、ファインマン物理学IVの方がわかりやすそうです。

7 一般相対論へのあゆみ
重力と慣性力が区別がつかない、という「等価原理」を説明します。計量テンソルなどの数学的準備を行った後、重力下での運動方程式を導きます。

8 重力場の方程式
電磁界の方程式と並ぶ重力場の方程式を導きます。また、ブラックホールなどの説明もいたします。

さて、虚数時間ですが、確かに第3章で、ミンコフスキー空間を扱い、時間を虚数として扱うことで特殊相対論が見通しよくなるということを紹介しています。ただこれは、あくまで見通しのよさを目的としてのものであり、現実の時間が虚数であるというところまでは踏み込んでおりません。

ですから、その後の章でも、時間は実数的に取り扱い、4元ベクトルの演算に特別な規則(時間と空間で符号を変える)を導入しています。つまり、ミンコフスキーに触れて、時間を虚数とすることで見通しが良くなると述べているのですが、その後の扱いは時間を実数としてしまっており、せっかくの見通しのよさが何ら生かされていないわけです。

とはいえ、「教科書」という意味ではこの本のような書き方しかできないのではないかと思います。そういえば、「ファインマン物理学」も大学の講義を元に書かれたもので、学生には通説を覚えてもらわないと、あとで困るかもしれない、との配慮がなされていたのかもしれませんね。

なにぶん、時間軸が虚数であるとすると、まずローレンツ変換はなくなってしまいますし、4元ベクトルの計算の仕方も、(時間と空間で符号を変えるという)標準的なやり方ではなくなってしまいます。これでは他所で試験を受けたとき、虚数時間などという変な説を覚えこんだ学生は、非常に不利な扱いをされてしまうのですね。

さて、この本をどう評価するか、ということですが、まず、私が高く評価しておりますファインマン物理学よりも、相当に読みやすい本です。ファインマン物理学では、相対論に関する記述がI(力学)とIV(電磁波と物性)に分かれており、相対論を知ろうとすれば、あちこち飛ばし読みをする必要があります。

おまけに、ファインマン物理学は、一般相対性理論に触れていない。これは物理学のコースとしては、少々片手落ちです。まあ、ファインマンさん、相対論の専門家というよりは素粒子物理の専門家でして、ご自分の専門領域に力が入るのは仕方ないのですが、重力場の理論という重要な項目を落としてしまうのは、物理学のコースとして、少々問題あるのではないでしょうか。

そういう意味では、この本は、ファインマン物理学で抜けていた部分を補うことができる、という価値があるのですね。

章でいえば、1、2、4章はファインマン物理学Iに対応する部分でして、さほど難しいものでもありません。で、3章のミンコフスキーの4次元時空がファインマンからすっぽりと抜け落ちている部分。とはいえ、この本でも、その結果を展開するわけでもありませんから、単なるミンコフスキー空間という知識が一つ追加されるだけの話です。そして第5章は、まあ、通俗的な疑問に応える部分でして、あまり面白いものでもありません。

第6章は、少々説明不足の印象を受けます。この部分は、ファインマン物理学IVの方がはるかにわかりやすく、この説明がちんぷんかんぷんの方はファインマンを読まれるのが良いのではないかと思います。

そして7,8章がファインマンには抜け落ちている一般相対論の部分です。これもあまりわかりやすいとはいえそうにありませんが、ほかにわかりやすい書物があるわけでもなく、さしあたりはこれを読みこなすしかないのではないか、と思います。そもそも、一般相対性理論というもの自体が、まったくもって判り難いものだったのですね。

と、いうわけで、以前からご紹介しておりました虚数時間の物理学ですが、これまでのところ、この考え方をきちんと説明した(わかりやすい)本は見当たりませんし、教科書としてそんな本を書くわけにもいかない、という事情も大体飲み込めました。

かくなる上は、私がこれを書き下すしかなさそうな気がいたします。その他の問題も種々抱えているのですが、まずは、折をみて、少しずつ虚数時間の物理学を展開してみようか、などと考えている次第です。ある程度めどがつきましたら、別カテゴリーを立ち上げて、これに関する記述をご紹介していきたいと思います。乞うご期待、というよりは、あまり期待せずにお待ちください。


虚数時間の物理学、まとめはこちらです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です