谷川流「学校を出よう!」を全部読む【ネタバレ注意】

先週のこのブログでは、谷川流れ著「学校を出よう!」の第1巻を読んだのですが、結局6巻まですべて読みましたので、その感想などを書いておきましょう。

まず、第1巻とそれ以降は、相当に異なる話でして、何しろユキに春奈が付いている、付いていない、という大きな違いがあります。また第2巻も少々異なる話でして、茉衣子と宮野はいずれの巻にも登場するのですが、第2巻はほとんど神田少年の時間旅行物語の感があります。

で、第3巻からいよいよ絶好調というところで、わけのわからない現象を前にした、自信家宮野の独走と、同じく自信とプライドでは宮野に引けをとらない茉衣子の憂鬱な日常が語られます。

もう一つの組み合わせとしては、高崎佳由季と真琴のカラミがあるのですが、これは少々無茶な設定でして、他人の精神まで制御ができる人にこれはなかろう、という気もいたします。

さて、どういう事件が起こって、どのように解決するかをここに書くことは少々憚られますので、物語の背景ともいうべき構造を考えてみることといたしましょう。

まず、第1巻では、先週書きましたように、PSY(サイ)ネットなる、複数の人間の脳を直接接続して、あたかもより大きな一つの脳とするネットワークが、物語の背景の主要な存在となっております。

で、第2巻になりますと、年表干渉者(インターセプタ)なる存在が明らかにされます。ここで、宮野と茉衣子はインターセプタと戦っており、それもけっこう優勢にことを進めているのですね。

ところが、インターセプタが姿を現しますのはこの巻だけでして、第6巻では、宮野の知らぬところで勝手に歴史に介入しております。終わりのほうになりますと、なにかなされたということを、宮野や茉衣子は気づくのですが、それも、具体的ではありませんし、ましてやこれに抵抗することなど全くできないのですね。

さて、第3巻は、幕間の小喜劇、といった感じのお話ですが、この巻から「後期学校を出よう様式」とでも言うべき物語の枠組みが確立されます。

非常識だが見識と戦闘能力だけはすぐれる対魔班班長の宮野と、プライドは高いが切れ易く、かつ宮野を嫌っているが宮野には好かれている対魔班班員で宮野とペアを組んでいる茉衣子の二人がお話の軸となります。

で、茉衣子と寮が同室の天然ボケ若菜とその兄で特殊能力を全く持たない佳由季が狂言回し兼ストーリーテラー、佳由季に心を寄せる生徒自治会会長代理で強力なテレパス能力を持つ真琴がその周囲を固める、というわけです。

茉衣子は、学内のものからは恐れられているようなのですが、密かに慕われているということもまた事実であるようで、意中の人のコピーが異常発生するお話の第3巻では、茉衣子のコピーが大量に登場し、茉衣子は大いに悩むこととなります。なかなか愛すべきキャラですね。

宮野は、文章だけを読んでいると、まじめ一徹のマッドサイエンティスト(?)型であるような印象があるのですが、挿絵や巻頭のマンガではなかなかに良い男に描かれておりまして、これならホストクラブに就職しても、かなり稼げそうなルックスであります。

さて、第4巻から、いよいよ後半のお話の構造が見えてまいります。すなわち、並行世界、ということなのですね。

しかしここで、重大な疑問があります。つまり、隣の世界に移動できたから、世界の数は限られている、と宮野は推論するのですね。

隣の世界が、1の次は2となっているから隣にいけるのであって、並行世界の数が無限であるとすれば、1と2のあいだにも無数の数があるために1から2へは行けないはずである、というのですが、これは明らかに誤った認識です。

第一に、整数は無限の数存在いたします。だから、1の次は2、2の次は3となっておりましても、どこまで行っても世界nの次には世界n+1があるわけで、限りがあるわけではありません。

第二に、分数(循環小数を含む小数でも同じです)で表すことができる有理数の数も無限にあるのですが、有理数の数は整数の数と同じレベルの無限に存在いたします。

というのは、有理数(分数)と整数は1:1に対応付けが可能でして、互いに対応ができる以上、その数は同じであるとみなして良いことになります。

分数と整数の対応付けは、二次元の表を用意し、行番号が分子、列番号が分母に対応するようにいたします。この表のサイズが無限に広ければ、あらゆる分数がこの表にかかれることになります。

この表のそれぞれの欄に一連番号を振れば整数と分数の対応が付きます。これは、行番号+列番号の小さい順、同じであれば行番号の小さい順に、番号をつければ良いわけで、表を左上から右に向かい、斜め左下につながるセルを順に番号付けをすれば良いわけです。このとき、約分できる分数となりますセルは飛ばして番号をつけます。

まあ、細かいことはどうでも良いような感じもいたしますが、数学的には重要なポイントですので、あえて指摘をしておきます。

さて、第5巻と第6巻は続き物でして、学園内の生徒達が暖かい死体になってしまう、という謎が物語の主題です。

この5巻が6巻に続いておりますところを見た瞬間、良くぞ6巻が出たものだ、とある種の感動を覚えます。なにぶん、同じ著者によります「涼宮ハルヒの分裂」の続編であります「涼宮ハルヒの驚愕」がいつまでたっても出ないのでして、「学校を出よう!」も、ひょっとすると危ないところであったのかもしれません。

この2つの巻では、3つの異なるストーリーが同時並行的に展開してまいります。まずは、暖かい死体をめぐる問題、第二に何者かが学園内の女子生徒をスパイに仕立てていること、第三に歴史干渉者をめぐる問題です。最初の二つの問題はネタバレですのでパスいたしましょう。

ここで宮野は世界が単に並行に存在しているだけでなく、重層的に存在している、ということに気づきます。で、上位の世界は下位の世界に干渉できる、というのですね。

しかしここで一つ妙な疑問が出てまいります。つまり、我々はなに故に下位の世界に干渉できないか、という問題ですね。この世界は、最下位のどん詰まり、ということでしょうか? これは、平凡の原則に照らして、余りありそうなことには思えません。

と、なりますと、何らかの特殊能力により、他の世界に干渉できる、と考えるのが妥当であるように思われ、そうであるなら、並行世界の他に、重層的な構造を考える必要もないように思われます。

そういえば、第4巻でも、他の並列世界に干渉した人達がいるわけですからね。

これに関しましては、谷川流版の「学校を出よう(7)」を待つことにしたいと思います。こちらも、出版が途絶えて久しいようでして、「涼宮ハルヒの驚愕」同様、推理する、という道もないわけではないのですが、この推理は非常に難しいのですね。

なにぶん、ハルヒの場合は前編が出版されて解決編を推理すればよかったのですが、こちらは、問題そのものが全く見えません。まあ、あまり気合も入らない、という現実もあるのですが、、、

さて、あとは「ボクのセカイをまもるヒト」でも読むことといたしましょうか。まあ、もう少しのあいだ、「学校」を反芻していても良いかな、などとは考えているのですが。