バーチャルヘブン:天国の作り方

このサイトの古い文書を読み直しているうちに、ちょっとおもしろいことに気付きましたので、書き留めておくことといたしましょう。題して、「天国の作り方」です。

AIがヒトの脳を追い抜くとき

このブログのオリジナル文書という固定ページに「意識をもった機械の詳細」という文書を置いたのは、2002年のころ、このブログを書いていたころですから、もう15年ほど昔の話です。

そのころは、10年もすれば、意識を機械上に作り出すこともできるのではなかろうかなどと考えておりましたが、まだそのような時代は到来しておりません。カーツワイルは、人工知能の性能が人を追い抜くシンギュラリティが2045年に到来すると主張していますが、この主張には異論も多々ある様子です。

この問題に対する私の考えは、それは可能であるというもので、人の脳に超自然的現象が起こっていないのであれば、それは機械的に構成可能である、とするものです。

でも、この技術がもたらす影響は、もしかすると、人工知能などよりも重大な問題をはらんでいるようにも思われます。これは、先にご紹介した文書にも書いたのですが、人の脳を上回る情報処理能力をもつハードウエアができるなら、人のニューラルネットワークをその上に再現することによって、人の精神を人工物上に再現できる、という事実です。

人工物上に再現された人間精神のもたらす衝撃

ひとたびこのようなことが可能となったら、どんな応用が考えられるでしょうか。

まずは、人の精神は不死になる。デジタルデータとして精神が存在するのであれば、バックアップを取ることもできますし、ミラーサイトに同一データを保存することもできます。

第二に、人の脳のニューロンは一定規模以上とはなりえないのですが、人工的なハードウエアであればいくらでも増強することが可能です。つまり、知的能力は生物学的な限界に左右されず、いくらでも高めることができる、ということですね。

一方、この精神を維持するためには、大規模なハードウエアを維持管理しなくてはならず、電力コストも巨額となるでしょう。一方で、高い知的能力を有する者であれば、それが自然人だろうと、人工的なハードウエア上に維持される精神であろうと、価値の高いものを作り出すことができます。

これには、小説や音楽などのコンテンツに限らず、ソフトウエアや様々な工業製品の設計、あるいは自然科学その他の学問的な研究なども含まれるのですね。もしもアインシュタインの頭脳がハードウエア上に残され今日まで活動し続けてていたなら、どれほどの素晴らしい研究成果を生み出していたことでしょうか。

コミュニケーションはどうとるか

ハードウエア上に維持された人の精神は、電子メールやチャットなどで、一般の人たちと通信することができそうですが、具体的にどのようにこれを実現するかとなると考えてしまいます。一方、MMDなどを見ておりますと、この精神をソフトウエア上に構築された世界の中で動かすことも十分に可能であるということがみえてまいります。つまり、人物とこれを取り巻く環境世界をCADデータ上に構築し、特定の登場人物をハードウエア上に維持された人の精神によって動かせばよいわけです。

これは、余計な手間であるように思われるかもしれませんが、合理的な意味もあります。すなわち、人工的なハードウエア上に再現された人の知性と、どのようにコミュニケーションをとるか、という問題に対する、簡単な解でもあるのですね。

人の脳にあるニューロンが人体のどの感覚器官あるいは筋肉に繋がっているかは、神経線維をたどることによって、あるいは何らかの手段により導通をチェックすることで知ることができます。これを利用して、再現された知性と外部の人間が相互に意志を交わすこととなるのですが、その実現のためには、再現された知性の外部インターフェースとなる筋肉や感覚器官をハードウエア上に作り出す必要があります。

バーチャルワールドという解

これには、人体同様の筋肉と感覚器官を備えたヒューマノイドをつくり、その個々の組織と再現された知性の該当するニューロンとを接続するのも一つの方法なのですが、このようなヒューマノイドを制作することは技術的に相当な困難が伴うでしょう。

CAD世界に構築したボーカロイドのような人型モデルであれば、ソフトウエアで作成することができますので、より安価に作ることができる。そして、このCAD世界の人物が、CAD世界の中でキーボードを操作するなり、発声器官を再現した物理モデルに働きかけて音声を発するなりすれば、比較的容易に意志表示をすることができます。

バーチャルワールドからの情報発信

外部とのコミュニケーション手段として、CAD世界にカメラと音声通信機能を備えたロボットを導入するというのも一つの手でしょう。このロボットを外部の人間が操作すれば、音声と画像によってCAD世界にある人の精神と会話することもできます。

さらには、この世界の内部を動き回ってその映像を外部世界に届けることもできるのですね。それがどんな感じかといえば、MMD作品を鑑賞することをイメージして頂けばわかり易いでしょう。このMMD的CAD世界の登場人物の多くは人工的に作られたデータなのですが、その中の一人だけは、かつて現実世界を生きた人物の精神が動かしている、というわけです。

行きつくところは人工天国と神様の世界

このCADデータの世界は、当然のことながらCADによって作り出すことができますので、CAD世界に組み込まれた人の精神活動によってCAD世界自体を改変することができる。CADの扱い方さえ覚えてしまえば、この精神は、さながら神のごときポジションを手に入れることができます。

当然のことながら、その人物にとっての不快な感覚は全てシャットアウトすることができる。つまりは、暑からず寒からず、腹も減らず喉も渇かないでいることができるのですね。

これを天国と呼ばずして、なんと呼ぶべきでしょう!

天国のきびしい現実

もちろん、この神様、CAD世界の内部でのみ力を発揮できます。またこのCAD世界は、現実世界にあるハードウエア上に維持されているのであって、極端な話、電源を落とされてしまえば活動を停止します。

だから、CAD世界と現実の世界は、互いに協調関係で行くしかありません。

結局のところこの神様は、外部の現実世界にとって価値あるものを生み出し、その見返りにハードウエアを増強してもらい、電力を供給してもらう、お互いWin-Winの関係で行くしかないのですね。天国にも、厳しい現実があります。

現世と往来できる愉快な天国

そうそう、CAD世界外部の現実世界の人が操作するロボットを、バーチャルリアリティでフィードバックしながら、CAD世界で動かすことができる一方で、現実世界に作り上げたヒューマノイドを、知覚のフィードバックを得ながら、CAD世界に維持された人の精神が動かすこともできますね。

つまりこの天国、現世とコミュニケーションできるというだけでなく、現世の人が訪れることもできるし、天国の住民が現世を訪れることもできるのですね。それぞれは、ロボットという形なのですが。

宗教家が夢想している天国とは異なり、人造天国は、現世ともお互いの行き来ができる、愉快な世界になりそうです。

補遺. 神々の相談

2017.1.31追記:このCAD世界に複数の人間が入り込むと、ややこしいことになりそうです。つまり、この人たちがみんなCADの操作ができた場合、勝手に世界改造をはじめてしまうと、収拾のつかないことになります。CADを操れる人は、いってみればこの世界における「神」であるわけで、この世界をどのようにするか、神々が集まって相談したうえで世界改造にとりかかる、といったルールが必要になりそうです。

このCAD、外部世界から操作することもできますし、最初の段階では外部でデザインする必要があるのですが、ある程度内部の人たちの技量が確保された段階からは、内部でデザインするほうが効率的ですし、人権的観点からも世界の操作は内部の神々に任せるということになるのではないか、そう私は考えております。