BIGLOVEと法令の遵守(コンプライアンス)

先週、私の元に一通のダイレクトメイルが届きました。

内容は、保険の勧誘なのですが、ビッグローブの会員サービスと称しているのですね。でも私はビッグローブなどに入会したことはないのでして、会員のはずはありません。

で、さては、と最初に思ったのは、最近話題の個人情報の流用でして、ビッグローブ、NECの運営するポータルサイトなのですが、私は以前、同じNECの運営するパソコン通信サービスであるPC-VANを利用していたのですね。ですから、PC-VANの会員名簿をビッグローブに流して、それをまた、会員サービスと称して保険の勧誘に使っている、と考えたわけです。

で、この、会員、という言葉に少々異常なものを感じて、PC-VANへの料金支払いに使っていたクレジットカードの請求書をチェックしたところ、なんと毎月会費を取られているではありませんか。その料金は、210円という小額なのですが、毎月ですから、馬鹿にはならない額になるのですね。

そうなりますとこの事件、単なる個人情報の目的外使用に止まらない、最近流行の、振り込め詐欺、ということになります。確かPC-VANの会員数は数十万人いたはずで、私の口座からこれまでに支払われた額は一万円を超えていたわけですから、かなり巨額の詐欺事件、の可能性もあるわけです。

しかし、これをやっているのは、一部上場企業のNEC。ですから、これほどみえみえの犯罪を犯す、というのも考え難い話です。いきなり警視庁生活安全課に対処をお願いするのは憚られる、のですね。

そこで、ビッグローブに電話を致しまして、何度かやり取りが合った末、

1. ビッグローブがこれまでに私の口座から引き出した金額は、全額返金する2. 今回の顛末と今後の対応に付き、ビッグローブは文書で私に説明する

ということになりました。個人的には、お金を返してもらえればそれで良いのですが、なにぶん私はネットの社会学を研究している者でして、専門領域に異常な事態を発見したら、それを究明するのは専門家としての責務。他にも同様な被害にあっている人が数多く存在しそうなことも、私一人がお金を返してもらって済ますわけにはいかない理由であるのですね。

で、この文書、まだ届いてはいないのですが、企業の行う行為、かりに違法行為であったとしても、企業サイドにも言い分があるはず。つまり、グレーな行為である、というわけですね。

おそらく、NECサイドの主張の基本は、パソコン通信は、パソコンを使って会員同士が会話するサービスであり、会員制のチャットサービスとは同種である。従って、パソコン通信の会員をチャットサービスの会員に振り替えたことはなんら問題がない、ということでしょう。しかしこの主張には相当な無理があります。

まず、パソコン通信サービスと言いますのは、各地に置いたセンターコンピュータと、会員とのパソコンをモデムを用いて直接接続するサービスで、サービス内容は、電子掲示板(BBS)、メイル、ファイルのダウンロード・アップロード、チャットの4つを基本としています。

一方、ウエブ上のチャットサービスは、インターネット経由でチャットルームを提供するサービスでして、パソコン通信とは全然別、ちょっと考えただけでも、次のような大きな違いがあります。

第一に、接続形態が異なります。インターネットへの接続環境を持たない人は利用することが出来ません。

インターネットに接続するためには、インターネットサービスプロバイダ(ISP)と別途契約を結ぶ必要があるのですが、ISPは通常、メイルアドレスも提供致しますし、インターネット経由のさまざまなサービスを受けることも可能となりますので、特別な場合を除いて、ビッグローブのサービスを受ける必要はなくなります。

第二に、提供されるサービスはチャットだけで、メイルやソフトウエアのダウンロードサービスを主目的としてパソコン通信を利用していた人には、利用価値がありません。

パソコン通信から有料チャットルームサービスへの契約切り替えを、NEC側からの通告だけで出来るとする根拠として、おそらく、PC-VANの契約条項に、そういった旨の一項目が設けられていたのでしょう。しかし、元来がパソコン通信に関わる契約ですから、このような変更が野放図に行えるわけはありません。

あくまでパソコン通信の範疇の中における契約変更であれば、NEC側からの一方的な通告で契約内容の変更もありえると思います。これはたとえば、パソコン通信のメカニズムを利用したコンテンツの有償配布や、より高速なアクセスポイントを設置した際に、その利用に対して特別料金を設定するなど、種々のケースがありえるわけですね。いずれにせよ、今回のケースは、既にパソコン通信の範疇を外れており、パソコン通信を前提としたPC-VANの契約でカバーすることは困難であると思われます。

もう一つ、料金形態の違い、というのがありまして、私は従量制でPC-VANに加入していたのに、ビッグローブでは定額制になっているのですね。これ、60分という時間制限がありますから、使用時間は計測しているはず。従量制に出来ないはずはないのですね。

従量制と定額制、毎月同じようにチャットする人には大した違いはないのでしょうが、ある月には使用するけど、かなりの期間にわたって全然使わない人には従量制が便利なのですね。まあ、ソフトウエアのダウンロードなど、使う月には1時間、2時間使いますが、必要なソフトがなければ利用することもないのですね。

この従量制から定額制への切り替え、悪く解釈すれば、従量制ではお金が取れない、と考えたためであるのかも知れません。また、月210円という小額のサービスを設定したのも、支払っていることに気付かれ難い、と考えたのかも知れませんね。この解釈が当たっていたら、このビッグローブの行為、グレーというよりは真っ黒、確信犯であった、ということになりそうです。

まあ、まっとうなビジネスであれば、サービスを提供していない人達に料金を請求する行為、かりに定額制のサービスであっても、少々問題であると言えそうです。その原因が、解約を忘れるといったユーザ側の錯誤に起因するものであっても、それに気付いたサービス提供側が注意を促す、というのが良心的なビジネスというものでしょう。

まあ、今のネットビジネスにそこまで要求するのは、土台無理、かも知れませんが、最初からそれを狙って、解約し難くしたりする、などの仕掛けを考えたり致しますと、相当に非倫理的な商行為、ということになるのでしょう。

今回のビッグローブにしても、入会手続きの電話が、えらく簡単に繋がるのに対し、その他の電話は、いくら待っても繋がりません。まあ、このダイレクトメイルを受けた人達の苦情電話が殺到してのことだろう、と好意的に解釈しておりますが、、、


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