政府紙幣を発行しても何も起こらない?

以前のブログでちょっと触れました「池田信夫 blog」は、なかなかに刺激的な、おもしろいことが書いてありますのでときどきのぞいているのですが、刺激的なことを書かかれるあまり、内容に矛盾を含む例も多いように見受けられます。このブログを読む方は、多少気をつけて読まれるのが良いかと思います。

何でこんなことを書いたかといいますと、2/10付けの池田信夫 blogで政府紙幣について論じられているのですが、「ハイパーインフレになる心配より、何も起こらない可能性のほうが高い」と書かれていることに、少々首を傾げたからです。

この先に、「無利子の国債を日銀が引き受けるのと同じだ」と書かれております。これが政府紙幣発行と同じ効果を持つとは、私も思います。しかし、そのいずれのケースも、「何も起こらない」ということはないはずです。

ちなみに、本ブログの以前の記事は、「日銀が国債を市中から買い入れることが、政府紙幣を発行して得た資金で政府が国債を償却することと同じである」としておりますが、池田氏の双方のケースで、政府が得た資金で市中に流通している国債を償却すれば同じこととなります。

池田氏のブログは、日銀の国債引受が「日銀の財務の健全性が損なわれる」恐れがあるとの白川総裁の言葉を引いて、日銀倒産のリスクまで指摘されておりますが、これは金利変動に伴う日銀保有国債の時価が低下するリスクに対する懸念です。

このリスクが日銀に負えないほど巨額になるような資金規模となるのであれば、政府による何らかの保障を日銀に与えるか、政府がリスクをテイクする政府紙幣の発行を選択するしかありません。

池田氏が心配されているのは、日銀が国債を引き受けて得た資金もしくは政府紙幣を発行して得た資金を、政府が濫費するケースではないかと、私には思われます。国債にせよ、政府紙幣にせよ、政府にとりましては借金と同じ性質を持つものであり、その回収が常に可能であるよう、政府は準備しておかなくてはいけません。

しかしこれをいたしました場合も、日銀保有国債を償還するなり、政府紙幣を回収するなりするまでの間は、市中に流通するキャッシュが増加する効果はあるでしょう。もちろん、そのキャッシュがいつまでも市中を流通していることは期待できないにせよ、一時的な効果はあるはずであって、まさにそれが景気刺激策であると、私には思われます。

経済的に有効な、つまり投資した資金が回収される形で政府が出資するか、国債を償却するためにこの資金を使用するのであれば、さほど問題はないのですが、政府による乱費にこの資金を充てられた場合には、池田氏の心配されるような問題が生じる可能性があります。

すなわち、将来の増税によって濫費分の穴埋めがなされるであろうと国民が予想する場合は、国民は借財意識をもつこととなり、その逆資産効果により消費が手控えられることになりますし、将来の穴埋めなどできないと国民に思われてしまった場合はハイパーインフレを招く危険が生じます。

池田氏の記述は、このあたりがはっきりと書かれていないので、支離滅裂な印象を与えるのですが、よく分析してみればさほど間違ったことを書かれているわけではありません。

さて、それでは経済政策としては何が有効か、と考えますと、まず、政府による濫費がありますと、その経済対策は効果が薄いはずですし、まかり間違って効果を発揮した場合にはインフレリスクを招くこととなります。政府がまずすべきは、濫費の逆、すなわち行政の効率化です。

日銀による国債の引き受けもしくは政府紙幣の発行という政策は、市中に流通するキャッシュを増加する効果がありますので、この点だけを捉えますと景気刺激策として有効です。ただしこれによって政府が得た資金を濫費いたしますと、前述いたしました問題を生じますので、その使い道には気をつけなければいけません。

すなわち、政府が得たフリーキャッシュは、経済的に引き合う公共投資に充てること、国債の償却に使用すること、内外の株式や債券などの購入に使用することなど、将来において資金が回収される用途に限定すべきであろう、とわたしは考えております。

そうであれば、目先は市中に流通いたしますキャッシュが増加し、景気浮揚効果だけを享受できるはずです。もちろん、小額のキャッシュ供給でも劇的な効果があろうなどと能天気に考えることは禁物で、市場動向に注意しながら、大規模かつ継続的にキャッシュを供給する必要があろうかと思います。

幸か不幸か、今日わが国には膨大な国公債残高がありますので、相当に大規模なキャッシュの供給であろうとも、その使い道に困ることはないのですね。


ふうむ、このあたりにも、大いなる勘違いがありますね。「大盤振る舞い」などして良いわけがありません。お金は、天から降ってくるものではなく、使ったものは、いずれは返さなくてはならないのですね。